旅情の広場
第3回「神石やまびこライナー」に乗って 加藤博和
加藤博和 広島県立大学院生
 朝晩が少々肌寒くなってきた8月の終わりに,「神石やまびこライナー」(油木・三和〜広島間)に乗ってみた。 例によって三次市から約1時間,油木車庫下の利用者用駐車場に車を止めた。 6月7日の開業式以来,東京行き夜行高速バスを退いた独立3列シートのスーパーハイデッカーが1日1往復を任されている。 写真を撮っていると運転手さんから「しっかり宣伝して」と声を掛けられた。 補助席が装備されていないので座席定員を超える利用者があった場合を個人的に心配していたが, 開業2ヶ月余りで「多かったり,少なかったり」といった様子。 切符販売の方が言われるには「往復合わせて,最高38人,最低1人」。 したがって,私の心配は残念ながら杞憂に終わっている。 「もう一度,行政関係に利用促進を働き掛けているところ」だそうだ。
やまびこライナー  始発の油木からは,女の子2人連れと,私と友人とで計4人。 油木の街に鳴り響くサイレンとともに,7時ちょうどに発車した。 霧のかかった山中の国道182号を福山方面へ進むが,バスにとっては幅員が十分とは言えず, カーブを伴い,上り坂となっている。しばらく行って,右に折れ,県道27号へ進路を取った。 立派な斎場を過ぎて,“森林浴”をすると,車高ギリギリの高さのトンネルに突入し,目が覚めた。 ここから三和(さんわ)町だ。一転,下り坂となり,ローカル便の長者ヶ原バス停付近の集落以外に人気はない。 次に家並みが見えてきたら,程なくして県立神石三和病院の前を通過し, 「やまびこライナー」2つ目の停留所である「小畠局前」に停車する。 7時15分の定刻通りであったが,乗客は見当たらず。小畠交差点を左折し,農道のような道路を快走する。 3つ目の停留所「上井関」には7時23分に到着し,3人の乗客を迎えた。 上井関は,東城と福山のちょうど中間地点に当たり, ここで右折して国道182号へ再び合流する(やまびこライナーの上井関バス停は国道上ではない)。
 車内テープが最後の乗車停留所である「道の駅」を案内する。 国道182号左手に三和町ふるさと活性化センターなどが並び,産直市が目当てなのだろうか, 駐車場に早朝から結構な数の車が止まっている。バス停で5人を拾う。これで今日の往路は12人と確定した。
 三和町から福山市へ入ったが,市街地へはまだ24kmある。曲がりくねった道路でかなりの標高を下っていく。 途中,数人を乗せた中国バスのローカル便の「東城」行きとすれ違う。 東城方面に向かう車の数も,日曜日ということもあってレジャーなどに出掛けているのか,意外に多い。
 福山市加茂町でようやく平地となり,片側2車線の国道を神辺町に入る。 日曜日なので朝のラッシュもなく,井笠鉄道の貸切バス2両を追い越して, 福山東インターからちょうど8時に山陽道へ上がった。広島まではおよそ100kmである。 山陽道上には千田と福山本郷にバスストップが設置され, ローズライナー(福山〜広島間,37往復) などを利用する人が数人ずつ待っていた。 やまびこライナーは間もなく 福山サービスエリアにて10分間の休憩をとり, 私もお手洗いに行ったり,背伸びをして後半に備える。
 山陽道を運行する高速バスは,広島空港リムジンバスに接続する高坂バスストップにも停車する。 やまびこライナーでもアナウンスが流れるが,本日は降車なく,本線上を通過していった。 やまびこライナーの車両は,標高の高い所にそびえる山陽道の上り坂でスピードダウンしてしまうが, 独立3列シートの中で私はしばしの眠りに入る。志和インター過ぎに目を覚ますと,交通量が増えていた。 9時11分に広島インターを出て,アストラムライン中筋駅で3人を降ろし,祇園新道をスムーズに走行して, 定刻より6分早い9時29分に広島バスセンター降車バースに無事到着した。
 やまびこライナーの復路は広島バスセンター発16時43分(油木着19時18分)で,それまでの間, 運転手さんは休憩所の“特等席”を占めて「ゴロゴロする」のだそうだ。 ちなみに私と友人は,車を置いているので油木に戻る必要があるのだが,やまびこライナーでの往復とせず, 広島バスセンター発11時28分の岡山行き高速バス(両備バス便)に乗り継いだ後,JR山陽線で福山に引き返し, 福山駅前(5番乗り場)発16時05分の東回り東城行きローカル便を利用する行程を組んだ(油木帰着は17時20分)。
 ところで,例えば油木からローカル便とローズライナーを乗り継いだ場合,正規運賃で3,620円, 所要時間も約3時間かかるし,中山間地域にあって,やまびこライナーは便利な交通手段だと思うのだが, 利用者数が伸びていないのは気掛かりである。
 一つの要因として,やまびこライナーが想定するエリアに住んでいる人は多くが, 実際はリードライナー(神辺・新市・府中〜広島間,16往復)ピースライナー(甲奴・上下〜広島間,6往復)を利用されているということがあるようだ。 1日1往復のやまびこライナーより便数が多いので使い勝手が良いし,駐車場もそれぞれ整備されているので車で容易にアクセスできる。 他方,福山東インターを経由している現在の運行経路上にある福山市北部や神辺町での停留所設定がなくメリットが余りないので, 小畠から直進して高蓋を通って上下へ出て,ピースライナーの油木便として運行すれば乗客は増えるというのが運転手さんの発想であり, 傾聴に値すると考える。自治体から補助金をもらっているやまびこライナーはなかなか1往復から2往復に増便されそうにない。
(本文=加藤博和,写真=井上武明)
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