第2回高速バス路線の開業相次ぐ
加藤博和 広島県立大学院生
加藤博和 広島県立大学・大学院生 加藤博和

 2002年5月末から6月初旬にかけて,中国バスの高速バス路線が相次いで開業した。中国バスの一ファンとして,うれしいことこの上ない。2つの路線それぞれの出発式の模様を交え,ご紹介に代えたい。
●福山・広島〜小倉・福岡間 「広福ライナー」
 去る5月31日から,福山・広島と小倉・福岡を結ぶ高速バス「広福ライナー」が運行を始めた。広島発着の昼行便が6往復(所要時間約4時間),福山発着(広島経由)の夜行便が1往復の計7往復が提供され,運賃は広島から片道4千円とお得だ。
 当日,広島バスセンター2番乗り場に特設された出発式会場には早朝から,共同運行する4社の関係者が集まり,眠気の中にも笑顔が交わされていた。後景では,福岡線の開業を知らせる前面幕を取り付けた広島交通及び中国ジェイアールバスの路線バスがセンターを発着していく。
 8時25分頃から中国ジェイアールバスの司会進行により出発式が催行され,濱野清士社長が「幸福な路線に育ててやっていただきたい」と挨拶。交通機関が多様化する中,新幹線及び在来線に対する「広福ライナー」の優位性をPRした上で,「安全運転と快適サービスに努める」ことを確約し,「中国・九州地区の発展に寄与したい」と締めくくった。
 「前任地山口でも福岡線開業の出発式に呼ばれた」という来賓の青木・広島陸運支局長は,「(開業前から)支局にも問い合わせがあり,期待している」と述べるとともに,「福岡・山口ライナーは週末などには続行便も出,春には増回した」ことを引き合いに,「しあわせライナー」が「地域の足として定着するよう,安全運行に万全を期して頑張ってほしい」と激励した。
 広島交通の女性社員から,8時33分発の福岡行きの乗務を担当する中国ジェイアールバスの柳井運転士に花束が贈られ,テープカットへと移った。青木支局長,若狭・広島バスセンター社長,平岡勝彦・広交観光社長,濱野社長,ジェイアール九州バスの関係者,そして濱岡康正・中国バス社長がハサミを入れた後,乗客10数名を乗せた「広福ライナー」は広島バスセンターを発車して「一直線」に九州を目指す。
 私事にわたるが9年前,九州大学に入学した際,広島〜小倉・福岡間「ミリオン」号での帰省を楽しみにしていた矢先,同年6月末をもって運休され,残念に思っていた。運行会社の採算性に見合わなかったことが理由と聞くが,私が数度乗車したり運行会社に問い合わせた範囲において,一定の需要は存在していたと考え,中国バスへも同路線開設のラブコールを送ったことがある。感慨深さから,発車を見送りながら自然と拍手をしていた。
 福岡は,アジアの玄関口として,また九州の「首都」として,発展著しい。その変貌ぶりをこの目で確かめたく,私も「広福ライナー」で関門海峡を渡りたいと気がはやる。(ちなみに濱岡社長の視線はすでに「韓国の高速バス」に注がれている。)
 広島バスセンター(1番ホーム)9時33分発福岡行きは,我が「中国バス」の担当である。後方9番ホームからは上記「ミリオン」号から退いた広島電鉄の車両が,松江行きとしてなお活躍していた。
●油木・三和〜広島間 「神石やまびこライナー」
 「広福ライナー」開業の余韻が冷めやらぬ間に,「神石郡−広島初の直行バス 7日から中国バス」との新聞報道に接し,驚いた。
 6月1日からは県内連絡高速バスで2路線の増便も実施され,日韓共催W杯サッカーに負けぬ中国バスの熱戦に手に汗握る。まず,福山〜広島間「ローズライナー」の共同運行に中国ジェイアールバスが加わり,1往復増の1日37往復となった。また,甲奴・上下及び世羅台地と広島を結ぶ「ピースライナー」も1往復増の1日6往復となり,矢野温泉を経由するよう改良されている。
 さて,それにしても「神石やまびこライナー」の始発時刻は午前7時ちょうど。三次の自宅から油木車庫までは県道を縦横に縫いながら1時間はかかる。早起きして車庫に辿り着いたのは6時40分頃であった。すでに中国バスの社員が多数見守る中,入念な神事が行われていた。
 神事を終え,濱岡社長は挨拶に立った。まず,2月から施行された規制緩和に伴い,地元の援助と協力によって実現できた経緯を語った。そして,「広島県は一つ」という思いを持っている当社は,行政や経済,文化等が広島(県西部)に集中している現状を打開するためには「交通網の発展しかないと決意」し,県下各地から直行便を開設した結果,「"西高東低"という言葉はこの地域からなくなったと自負している」と述べ,広島県を盛り立てていくことを力強く表明するとともに,安全運行を誓った。
 続いて,郡内4町村を代表して挨拶した丸山・三和町長は,中山間地域の特色ある地域づくりとして,地域の資源を活用した都市との交流を挙げ,高速バスを得たことを喜んだ。そして昨年要望し,中国バスの協力を得たことに謝意を表すとともに,「1往復が2往復になるように」という皆の期待を代弁した。
 各町村長及び町村議会議長らの来賓紹介の後,都市と農村との交流を期して,乾杯が行われた。時刻はすでに出発の定刻を過ぎているが,田舎らしい出発式である。主婦らを中心に10名余りがバスに乗り込み,拍手に包まれながら7分遅れで出発した。油木車庫を出ると,三和町内でも乗車を扱う。乗客の待望している姿が浮かぶ。また,山陽自動車道上で広島空港リムジンバスと接続するため,大幅なアクセス改善につながっている。
 ちなみに使用されている車両は,中国バスの花形である東京行き夜行便「エトワールセト」で活躍していたお古だが,「3列独立シート」のままでゆったりしている。満員時の対応が若干,憂慮される。
 神石郡は道路事情があまり良いとは言えず,中国バスのエリア内にあって,広島行きの直行便がなかなか実現しなかった。当地域の人は,東城に出るか,新市・府中辺りで「リードライナー」に乗るか,であったろう。かつて米子行きの「フライングフィッシュ」が油木車庫に立ち寄っていたが,岡山道開通によって当地域を迂回し現在に至っている。高速交通網から取り残されてきたと言って過言ではない。1往復ではあるけれど,今回の高速バスの開業が大きな精神的効用をもたらしていると想像される。
 逆に,開発があまり進んでいないと言うことは,それだけ自然をより多く残しているという魅力でもある。郡内の住民の多数に高速バスの利便性が「やまびこ」の如く伝わり,また,都市住民に神石の豊かな自然の良さが「やまびこ」のように広まって,1日1往復の輸送力は決して大きくはないけれど「こだま」となって増幅し,当地域にとって大きな相乗効果がもたらされること,そして「神石やまびこライナー」がいち早く増便されることを,私は楽しみにしている一人である。
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