第162回     備後の四ツ堂(46)

  
 福山市新市町 「馬場上地蔵堂」

正面から見た馬場上地蔵堂。

 新市の吉備津神社前に細い道が南北に伸びている。かつての西城往還である。備後北部へ続くこの道はまた、吉備津神社参拝の参道でもある。旅人や参拝者、多くの人々がこの道を行き来したことだろう。
 神社から北へ進み、網引公民館の北側四ツ角に建つのが「馬場上(ばばがみ)地蔵堂」だ。堂がいつの頃から存在するかはわからない。瓦葺宝形造、四方吹き放ち、往還の辻に建つ、いかにも四ツ堂らしい堂である。床には畳も敷かれ、休憩するにはもってこいだ。
 休憩ついでに、本尊に手を合せてみたい。本尊は、地蔵菩薩。衆生を救済する地蔵は、古くから一般大衆に人気の仏様だ。様々な願いを託されて、数え切れないほどの種類の地蔵菩薩が生まれた。とげ抜き地蔵、イボ取り地蔵、子育て地蔵、田植え地蔵、身代わり地蔵、勝軍地蔵などなど。どんな願い事でもきいてもらえそうだ。
 日本では、地蔵菩薩が子供を守ってくるという民間信仰が強くある。馬場上地蔵堂の地蔵も、「子安地蔵」として、地域の人々から信奉されている。子どもが健やかなることが、地域社会にとっては、最も大切なことである。
 
 

本尊の子安地蔵様と左手に猫供養地蔵
 
 特徴的なのが「化粧地蔵」でもある点だ。地蔵に化粧を施すことは全国的に例のあることだ。非常に派手な化粧地蔵もあるが、馬場上の地蔵の化粧は、ほんのり淡く上品である。
 もうひとつ、子安地蔵の横に安置されているのが、これまた変わっている。猫の姿が陽刻された猫供養地蔵である。新市町史によれば、昔、魚を取った猫が殺され、その場に居ながら助けてくれなかった人のことを、猫が恨み、その家族の者に病気として祟った。そのため、猫地蔵を祀り、猫の供養をしたという。
 相方城の中腹にも猫供養地蔵があるという。そちらは法事の膳を取る猫であるが、猫供養地蔵は、案外たくさんあるのだろうか。



備陽史探訪の会
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