第149回     

  
 山城のすすめ

土橋を渡って最初の堀切。案内標識があるので初心者にもわかりやすい。

 城と言ってまず思い浮かべるのは、空にそびえる天守閣、石積みが美しい石垣、ゆったりと景色を映りこませた水堀……などだろうか。
 しかし、今回は、そういうイメージからかけ離れた山城の話である。もっとも、天守や石垣が残っているのは皆無といっていいほどで、山城跡というのが正しいだろう。その数、備後だけでもざっと500ほど。神辺城を知る人は多いだろうが、山城のほとんどは山に還っており、なかなか身近に感じることは難しい。
 しかし、山城ファンは多い。群雄割拠した戦国時代を語るに山城抜きにしては語ることができないからであろうか。
 以前、銀山城と長峰城を紹介したことがあるが、この他に登ったことがある山城跡はわずかであり、なかなか紹介するに及ばなかったが、このたびは、ぜひおすすめしたい山城がある。
 福山市芦田町の利鎌山(とがまやま)城跡だ。福山市内でも最大級の規模を誇る。2012年、福山あしな商工会青年部により登山道の入り口に説明版が設置された。また「福田の里を守る会」の尽力によって、城跡全体が整備されているので、とても登りやすくなっている。
 
 山城の醍醐味ここにあり

眼前に立ちはだかる大堀切。攻略は西側の登山口がおすすめである。
 
 説明板がある登山口は山の西側の麓にある。別所集会所と木野山神社の間の舗装路を進んでいく。
 急坂を20分も歩けば尾根に出る。尾根伝いに進み、土橋を渡り、堀切・畝状堅堀群を左手に見る。他にも井戸跡、切岸、土塁など、主要な設備には案内板が設置されているので、初心者にも楽しみやすい。
 主郭の南側は非常に険しい切岸(きりぎし)だ。その昔、敵方はどうやってこの急峻な山を攻め登ってきたのか。下を覗き込むと足が竦んでしまうほどだ。
 郭に立つと、冬枯れの木立の間からは、福田の里が一望できる。この地を守るべく、城主はここから四方に睨みを利かせたか。山歩きが、ごく自然に歴史への扉を開いてくれる。 
 もうひとつ、山の北方向(市原方面)からの登山道も整備されている。十個近い小郭を登っていくと、眼前に立ちはだかる迫力の大堀切。果たしてこの城に攻め入ることができたのだろうか。身をもって「難攻不落」を体感する瞬間だ。上方、木立の向こうに郭の土塁が見えるが、ここから郭を攻略することは、おすすめしない。
 利鎌山城主については、明確な史料は残されていない。福田氏の家城であったようだが、その後滅んだとも、存続したとも考えられ、諸説ある。興味のある方は調べてみるのもよいが、この山城跡の魅力は、城主云々よりは山城としての圧倒的な説得力であろう。
 標高206m、道路も整備され、下草も刈られ、登りやすく、なおかつ、これほどに山城の醍醐味を堪能させてくれる城跡はない。



備陽史探訪の会
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