第104回      

  
 祭りの花形・千歳楽


 10月は秋祭りのシーズンである。備後地方でもあちこちで秋祭りが行われる。
 豊饒を感謝した秋祭り。神事と神輿渡御は祭りの柱である。そして祭りに華を添えるのが太鼓台。詳しい起源は不明だが、江戸時代中期には全国的に広まっていたようである。
 地域によって違いはあるが、二~数名の人間が乗り込んで太鼓を叩き、それに合わせて掛け声をかけ、数十人~百人以上で担ぎ上げ、あるいは曳き、神輿渡御のお供や先導しながら練り歩くという形式は共通している。呼び名は、ふとん太鼓・頂載(ちょうさい)・千歳楽・布団太鼓・布団だんじりと様々である。
 鞆の秋祭りも、最終日にはチョーサイと称して太鼓台を引き回す。大門町や春日町では、これを「千歳楽(せんだいろく)」と呼ぶよ。
 春日町にある浦上八幡神社は、400年以上の歴史をもつ神社である。明治時代より、秋祭りに、2基の千歳楽をぶつけ合い、祭りを盛りあげるようにした。しかし担ぎ手の減少により昭和38年に途絶えてしまった。それを平成19年、44年ぶりに保存会が復活させた。

 若者たちが担ぐ未来

平成21年(2009)当時の千歳楽

 見事な秋晴れの下、神社の参道脇に神輿渡御を待つ千歳楽と担ぎ手たち。粋な祭り装束に身を包み、きりりと捻り鉢巻を締めた出で立ちは、さすがに目を引く。
 神事が終わると、はね踊りの鉦・太鼓が鳴り、いよいよ神輿渡御が始まる。露払いをはね踊りが務め、2基の神輿が続く。2匹の鬼が参道を降りて行くと、千歳楽に20人ほどの若者が取りついた。
 太鼓や乗り手で350キロ以上となる千歳楽を、120名以上の若衆が交代で担ぐ5カ所の御旅所を巡り、7キロの道のりを数時間かけて練り歩くという。
 いなせな若衆による巡行は、力強さがみなぎっており、のどかな里の風景の中、弾けるような明るさを放っている。担ぎ手自身がもっと楽しむことで、観る者たちはその活気にどんどん巻き込まれていくに違いない。
 「今の若い者は肩が弱くて……」どの地域でも聞かれることばだ。確かに、若者の肩に荷は重いだろう。しかし一年、二年と年を積んでいくうちに、その肩には浦上千歳楽だけではなく、地域の人たちの夢や希望や誇りまで軽々と担ぎあげることができるようになるはずだ。
 未来を若者たちに託した年配の方たちが見守る中、千歳楽は、しっかりとした足取りで神輿の後を追って行った。地域コミュニティの崩壊が叫ばれて久しい。しかし、浦上地区では、確実に新しい希望に満ちたコミュニティの核が育ちつつある。復活したのは伝統文化だけではなかったようだ。若い人には、郷土を楽しむ権利をどんどん行使してほしいものだと実感した。


備陽史探訪の会
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