第82回      備後の四ツ堂(17)

  
 福山市駅家町服部本郷 「六地蔵さん」

床面積が広がり新しくなったお堂。

 三原市佐木島の県重要文化財「磨崖和霊石地蔵」が、2009年、樹脂を塗って保護されることになった。1300年に仏師念心が彫ったとされる。波打ち際にあるため、長年の浸食により傷みが進んでいる。住民が市に対策を求めていたもので、市が保護に乗り出すようだ。本物の全体像は干潮時にしか見れないが、県立博物館に置かれているレプリカなら見たことがある人は多いだろう。
 福山では磨崖仏の存在そのものが珍しいのだが、それを本尊とする辻堂が市内に唯一存在する。服部本郷の県道逆瀬川駅家線の旧道沿いにある「六地蔵さん」である。
 服部川を北上し、服部本郷会館あたりから右の旧道を行く。右手に二つ並んだ辻堂、そして福泉坊、円福寺を眺め、辻堂と見紛うような稲荷大明神の前の橋を渡ると急坂が現れる。坂を登ると三叉路だ。その川沿いにある高さ2メートル幅3.5メートルほどの巨大な岩に、6体の地蔵尊が陽刻されている。岩に覆いかぶさるようにして建てられた、切妻セメント瓦の六本柱の簡素な堂。6体の地蔵が彫られているということだが、風化が著しく、はっきりと認識できるのは2体の地蔵尊のみである。
 辻堂としての歴史はどれぐらいのものかよくわからないが、磨崖仏は相当古くに彫られたものだろう。
 

はっきりと形のわかる2体のお地蔵さま。

 坂を登った者、降りてきた者、長い年月の間、ここで一息ついた者がどれほどいたことか。眼下に流れる服部川に、懐深い蛇円山。現代でも、ほっと一息つきたくなる絶好のロケーションである。その昔、ここより神子原の里まで辻堂はなく、多くの旅人の拠り所であったと思われる。
 昭和59年の調査記録には、毎年8月に地蔵盆が行われ、円福寺の住職により読経がなされ、甘酒なども供えられていたという。それから30年、今でも続いているのだろう。老朽化した堂は新しくされ、管理も行きとどいている。現代の旅人の拠り所にもなるだろう。


備陽史探訪の会
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