第81回      

  
 春を告げる神明市

神明市のシンボル、大ダルマ。今年、新調された。(写真は2009年当時)

 別名「ダルマ市」とも呼ばれる「三原神明市」は、毎年2月の第2日曜日を含む前3日間に行われる備後路に春を告げる祭りである。祭りといっても、賑わいを創出しているのは神社の祭礼ではなく、露店そのものが主役といっていい。
 もともと「神明祭」とは、伊勢神宮を祀る祭りのことで、室町時代末期、港町として栄えつつあった九つの町組が始めたのが起こりとされる。
 また、伊勢神宮の分霊を旧暦1月14日の左義長の時に祀っていたそうで、440年ほど前、小早川隆景がこの「とんど祭り」を「神明祭」と呼び、全国の商人を呼び集めて盛大な市を立てる祭りにしたとも云われている。隆景は、市に繰りだす人出をみて、その年の領内の景気を考量したそうだ。
 以来、市を立てる伝統を受け継ぎ、今に至っている。
 現在の「三原神明市」では、全国から400以上の露天商や催し物が軒を連ね、縁起物のダルマを買い求める人たちで、東町、館町、本町一帯は身動きならないほど賑わう。
 景気を呼び込む庶民の力

あふれんばかりの人・人・人、大変な賑わいである。

 神明市最終日。三原へ向う電車からして満員で、その賑わいぶりが容易に推察できる。三原駅に到着すると、駅構内から周辺まで人であふれかえっている。
 駅の北側にまわり、市の立っている本町から館町、東町へと進む。両側の沿道にはずらりと露店が並び、その間を人々はひしめきあい、押されるように通路を進む。
 屋台はどこの祭りにでもありそうなものだが、これほどの長い距離ずらりと並ぶ様は圧巻である。その所々で売られている神明ダルマがまた独特な雰囲気を醸し出している。そして、植木市やお化け小屋など、古式をそのまま残した市に、どこか懐かしい気持ちとなり、つい童心に返って、あちこちの露店を覗きこんでしまった。
 大通りを渡り東町に入ると、市の熱気はさらに高まる。この通りには、歳神様である翁の面を祀った宮があり、多くの参拝客がお詣りしていた。市の端には、シンボル的存在の高さ4・3m、重さ180kgの日本一の大ダルマが頭上に設置されており、あたかも、その年の活況ぶりを確かめているいるかのようだ。
 正直に言って、市場祭でこれほど人出があるとは思ってなかったので、実際に目の当たりにして驚いた。まさに老若男女、親子連れから友達同士まで、様々な年代層の人々が集っている。「賑やかしの市場祭」とはよく言ったものである。そこに斬新性はないかもしれないが、今どきの祭りなど足下にも及ばない伝統と信仰と庶民の底力がある。
 自分たちの町のルーツや核とするものが何であるかを知り、ぶれない町づくりをすることの大切さを教えられたような気がする。


備陽史探訪の会
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