第68回      

  
 これぞ、鞆の祭り

鞆の祭りに繰り出すだんじり

 「チョウサイジャ、チョウサイジャ」思わず弾みたくなるようなリズミカルな節回しに、今年(2008年)も引かれるようにして、鞆へと繰りだした。
 鞆のお祭りといえば、沼名前神社のお弓神事とお手火が有名だが、渡守神社のチョウサイは、鞆の町を代表するにふさわしい祭りである。
 渡守神社の例祭は、鞆の秋祭りとされ、旧暦8月11日から3日間執り行われる。旧鞆七町の輪番制であり、当番町になるのは7年に一度のため、昔は借金しても派手にやるという気風が生じていたそうだ。
 今年(2008年)の当番町は道越町。渡船場を過ぎると、軒に幕と提灯がかけられた家並が続く。
 当番町には往来に面したドアを開け放し、「造り物」といわれる人形が飾られる。毎年趣向を凝らした人形たちが手作りされるが、今年は、ポニョや、篤姫、鬼太郎などが、通りを行く者の目を楽しませてくれた。あちこちに飾られた活け花にもおもてなしの心遣いを感じる。
 一日目は、渡守神社から当番町への神輿渡御、二日目は当番町での御旅所祭、三日目は当番町から神社への還御祭である。その時に「造り物」を台に乗せて還御を見送るそうだ。
 そして、神事がすべて終わったあと、当番町のだんじり(長歳)が町に繰りだし、祭りは最高潮に達する。チョウサイの始まりである。
 町の歴史に寄り添う心

長唄にあわせて、右に左、道幅いっぱいに、跳ねるようにして引っ張っていく。

 50人以上の子供や若者が引き綱に取り付き、長唄にあわせて、右に左、道幅いっぱい跳ねるようにして、元気いっぱい引っ張ってゆく。だんじり(長歳)に取りついた男衆たちは、台車を右に左へと激しく回転させる。
 合間に「チョウサイジャ、チョウサイジャ」の大合唱。観てる方も、口ずさみ跳ねたくなってしまう。
 この引き回しは観光のためではない。神社の例祭が終わった後の、町の人たちの慶びの祭りだ。決して先を急がず、共に繰りだしていることを心底楽しんでいるように思える。だからこそ、観ている側も、理屈抜きで楽しくなる。
 当番町の賄いや引き回しの警護をするのは隣町の習わしだ。表方も裏方も、町の人たちが主役である。祭りとは本来そういうものだろう。
 チョウサイの起源は、鞆に波止場の築かれた文化7年(1824)の築港祝いに、江之浦町がつくってかつぎまわったのがはじめで、他の六町もつくるようになったと伝えられている。今の鞆の町並ができあがったのもその頃であり、まさに、町と共に歴史を重ねてきた祭りだ。チョウサイこそ、鞆の町に最もふさわしい祭りだと思う。
 今年は、鞆内外の有志による「ともえ祭り」が秋祭りに華を添えた。古い町並の残る鞆でしか味わえない雰囲気は、今の時代、新鮮で、新しい町づくりへの示唆に富んでいる。古に寄り添う新しい風にも期待したい。


備陽史探訪の会
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