高原のルモンド
16. 「神石高原へ住みなぇ」
2005.07
 緑は深く、水がうまい、空気が良い、そのことはすでに周知のこと。風、温度、湿度、丁度よい。もし平均で5℃位の地球温暖化があったとしても、この地域は屁ともない。 活断層がない。津波がこない。床上浸水がない。電車事故、踏み切り事故など絶対にない。嘘ではない。
私は世界の観光名所へ行っても、その時の感動はそれなりにあるにはある。
しかし、それがどんなよい所でも住んで見たいと思うことはない。落ち着かないのではないが、どこか心の中に疲れが残っている感じである。
だが、神石高原に帰って来れば心の底からやれやれと思う。そしてそして思う。こんなよいところはないと。大自然の静けさ、吹きわたる風、なつかしさをそのままにした山々の形、点在する家々。全体がかもし出す大きな大きな抱擁感。これは世界中何処を探してもない。
燕が古巣へもどる。鮭も生まれた川へもどるように、それはお前の主観だろうと言うかも知れない。しかしそれを割り引いても確かに日本の佳境である。
のどかな神石の風景
「ふるさとの山に 向かいていうことなし ふるさとの山はありがたきかな」
啄木とて、さもありなん。
 昔のこと、東京などへ行くのは運命の岐路のような別れであり、遠い遠い未知の世界にゆくような思いであったのだろう。隣近所の人々が総出で村はずれまで送ってくれた。なつかしい人々の人情と勿体ないくらいの温かさがあった。
いまは当然ながらアメリカ行くにしても隣村へ行くのと変わりはしない。だから見送りはしない。しかし、ここでは未だにそうしたものを基調とした純朴さが、そこここに感じられ、田舎特有の人情が残っている。これも嘘ではない。

 ところで神石高原町の面積はどれくらいであろうか、4ケ町村がひとつになって38181ヘクタール、そのうち宅地、雑種地は別として耕地のみでも10440ヘクタールある。意外と山に比べて平坦地が多いことを示しているが、総面積は、いま出来つつある神戸空港の実に636倍である。
神石高原町の総人口は12327人で、そのうち年寄り(65才以上)5070人(41.13%)であるがそのうち、要支援(284人)を含む、いわゆる介護の必要な人が1140人。人間は年々年をとる、だんだんと身体の不自由が重なってきて、挙句の果てに「やすらぎ苑」で終わる。
気がつけば、生まれるものが少なければ、神石高原の人口は減る一方である。

 空港も鉄道もない。そして高速道路もはなれたころばかりを通っている。まるで蝦夷地、交通網の死角とも言われるのは事実である、
しかし、ひと昔と比べて考えれば隔世の感ひとしおで、一家に一台ではなく、一人に一台のクルマ社会である。別に便利が悪い実感はない。駐車場も広いしゼニも要らない。
アクセスは国道182号線がどちらからも主要となるが、かつてこの地は極端な山奥と思われ、我々は神石の山猿と嘲られた時代がある。筆者の住むところは岡山県境に近い仙養ケ原であるが、道上の商店街まで30分あれば充分で福山駅までは45分あれば着く。
 福山市道上にフジグランが出来て、あの周辺は土地代が1uが80万円と聞く。あの喧騒と渋滞をのがれて 神石高原にくれば、1uが800円(1反歩80万円)も出せばいくらでもよい所が手に入る。
空家、空室もたくさんある。学校もたくさん空家となっている。町内全戸数4320戸の中で、老人の一人暮らしがなんと1000軒を超えるほどある、これはやがて空家になる。
これは寂しいことである。だから、やっきになって活性化が叫ばれ、役場では居住大歓迎である。ところが本格的居住ではない金持ちの別荘は、まったく地域の活性化とは関係がない。かえって環境を破壊して居る面がある。
仙養ケ原周辺の別荘も麓の一部落より数が多い、しかし地域にとっては屁にもならない。私が「神石高原に住みなぇ」と言うのは居住のことである。
 と言いながら私の本心のどこかに別に活性化しなくていい、このまま静かな方がいいと言う気持もあるにはある。あ、これを言っては何を言っているのかわからなくなる。
とにかく、役場では大歓迎には間違いない。新規居住の数十万円補助の優遇条件を提示して居たが、町村合併後のいまは取り敢えずなくなった。 ただ、出産5万円、入学3万円、結婚5万円、そして新規就農者には10年間経ったら敷地が無料、と言うようにそれぞれ祝い金が交付される。

 神石高原の四季はそれぞれがはっきりしていて、その味わいは深く常に美しい。思えばこの地でおくる人生は実に妙なるものかな。

 ところであなたは今後どう生きゅう思うとんなさるんか、へえじゃがなんじゃゆうても、楽ばあしよう思うちゃあいけん。苦から逃げちゃあいけん。
悪りいこたあ言わん、はよう煩雑な身の回りゅう整理して、
せえから神石高原に住みなぇ・・・
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