ここは今回、清水凡平さんの「びんご旅情」に登場する神石郡油木町近田であります。 そして私はそこの桜ケ峠(サクラガタワ)というところに巣くい、 芝生の研究に没頭しているすでに古稀に近い老爺(はじめからじじいではない)であります。
 ここの最低気温はマイナス13℃を何度も記録している寒いところであります。 標高は約650m、温量指数は87 温量指数とは地域の寒暖の目安で月々の平均気温から5℃を引き、 残りを1年間集計したもので、たとえば福山市は110、東京は120、仙台は92くらいで、 これも年によって少しづつ変りますが、昨今は地球温暖化の影響でしょうか年々上昇を続けております。
 ここでは標高が高いため、日温較差(昼と夜の温度差)も大きく、 そのため芝の特性をよりはっきり観察することができます。 例えば、年中暖かい所では芝生はよく育ちますが、どれもよく育ち、見た目比較することが難しいのです。 第一、芝生の実用性で最も大事な耐寒試験が簡単にはできません。
 しかし、長い間これをやっていると、いつのまにか人の口の端に上るようになり、 東京や外国からも物好きな人が視察に来られる様になりました。 そして、たまにどうしてこんなところ(不便な山中)でやるのか、と言う質問を受けることがあります。 「ここは私の生まれ故郷なのです」などとは言わず、おもむろにこの素晴らしい気象条件の話をいたします。 訪問客は完全に納得されます。 そしてひそかに自分だけで「生まれ故郷」を誇って居る次第であることは言うまでもありません。
 なお、質問のない場合は、これを問わず語りにすることを恒例として居ります。 メインの研究のひとつにノシバのコレクションがあります。 昭和の終わりから平成4年頃にかけて、所沢に住んで居る友人と合同したもので、 北海道から沖縄までの各地域で採集したノシバだけに限定し、これが360系統に及びます。 それぞれ1mの桝目に並べて栽培し、比較試験を行なっております。 その中で可愛らしいノシバ「ひめの」(あとで自分が命名)に出会い、このため貧乏やまずますます病は孔孟に入り、 わたくし、いまだに長旅に出る放浪癖が直らぬのはそのせいで、まことに相済まないことだと思っております。
 ところで、この「ひめの」は時代のニーズにぴったりの七つの特性をもって居り、 これが後日、「ひめの」の七不思議とも言われるくらい顕著であり、半端なものではなかったのです。
「ひめの」は新しく登録された「省管理型芝生」で、七つの不思議な特性があります。
その1.
葉が短くコウライシバと見違えるほどで、アメニティ広場、グランドゴルフ場、 校庭の芝生など3cm〜5cmの高さで使用する場合は刈ることがいらないほどです。 同じ高さの仕様でもコウライシバは年間10回以上刈込みが必要です。
その2.
強健なことも特徴で、葉が短く超小型であるにもかかわらず、 ほふく茎や根が不似合いなほど太く強いのです。そのためノシバの中では、 すりきれや踏圧に一番つよいのです。
その3.
緻密であること。単位面積の葉の数を数えて緻密さの比較をしますが、 「ひめの」は普通ノシバの3倍強でこれも一番です。 この緻密さも高いほどすりきれ踏圧に対する抵抗性があると言うことなのです。
その4.
葉の色が濃緑で、しかも珍しいブルー系の緑色をしています。 普通ノシバ、コウライシバは黄色系で、このため肥料が不足したときなどでは 色むらが出やすくなります。「ひめの」は少肥に耐え、色むらを起こしません。 秋の休眠は普通で、遅くまで緑を保つことはありませんが、 休眠色はオレンジの混じった黄色でこれもうつくしい色だと思います。
その5.
少穂、穂が出ないと言うことは、あらゆる芝種の中でも珍しく「ひめの」の 七不思議の中でも最大の特徴であります。 しかし、全く出ないのではなく極端に穂数が少なく(1/30くらい)3週間くらい遅れるのですが、 注意していなくてはわからないほどです。
その6.
強さの意味に耐放置性と言うのがあります。 生育の早い旺盛な芝ほどその管理手間を必要とするのが通常であります。  「ひめの」は なんとほったらかしても大丈夫なのです。 この性質とその1の葉が短く上にのびないことは、 大いに関係があり深いところで一つの問題のように思えますし、また驚くほど安定して生育いたします。 このため敢えて「省管理型芝生」と言わさせていただきます。
その7.
耐寒性が強いこと。これは前述のようにマイナス13℃をピークとするわが桜ケ峠の試験圃で 10回以上の越冬をクリアしていることで説明の必要を感じないのであります。
さて、辛抱はしてみるもの、この度この「ひめの」が新しい日本芝として農林水産省の品種登録を認められ、 平成13年8月16日付けをもって発表がなされました。 これからこれを「省管理型芝生」と言う新しい発想で世に送り出したいとわくわくしています。 古賀政男は「誰か故郷を想わざる」などなど数々の古賀メロディを創造し人々を感動させ、 限りない夢を与えました。思えば素晴らしい生き様であります。 若いころ、それにあやかって自分にもなにかできないものかとよく思ったものです。 それに対しては「ひめの」など比べるべくもありませんが、 しかし新しいものを社会に送り出すことは同じです。 神石郡油木町近田からそれができることだけでも心からありがたいことと思っています。 そしてもしかして、今ならまだ生きているうち、このネタで貧乏神と対決できるかも知れないと、 ひそかに夢を燃やしているところなのであります。 もし興味がおありの方があるときを思い、下記に住所等を記して置きます。
ゾイシアンジャパン 株式会社
宮池 誠文
住所 〒720-1622 広島県神石郡油木町大字近田257
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